メルヴィン・ヴァン・ピーブルズ『スウィート・スウィートバック』71年製作
1993年10月5日火曜
ブラックシネマ不朽の大傑作。ベスト・オブ・ザ・ベスト。
これを凌駕するものは現われないだろう。
この作品なくしては、ブラックスプロイティーションの時代も、『黒いジャガー』もパム・グリアも『吸血鬼プラキュラ』も、現われえなかった。もちろん、ブラックシネマの時代も…。
ポルノを撮るというふれこみで作られたブラック・メッセージ映画。
ヒーローは売春宿の用心棒。スウィートバックの仇名の由来は、バック(尻)のセックス・アピールだ。
ブラック・エロスの発露は、そのままホワイト・アメリカへの叛逆だった。
ファーストシーンは、娼婦に可愛がられる少年スウィートバックの童貞喪失。メルヴィンの息子マリオの映画初出演。じっさいにも「ヤッタ」という伝説が残っている。
いきがかりで白人のCOPを殺してしまったスウィートバックは、逃げに逃げる。
アスホールな白人国家にそのスウィートなケツを向けて。
逃亡こそが彼の存在の証しだ。
逃げつづけるメルヴィン・ヴァン・ピーブルズの肉体が「黒いペニス」そのもののように画面を制圧する。
その興奮。
そして彼は言う。
「Watch Out !」
スウィートバックはもどってくるぜ。カリを返すために。
画像は、制作ノート&対訳シナリオ&サウンドトラック版CDブックの表紙。
初期のアース・ウインド、ファイアが聴ける。
DVDなど、まだなかった時期。CDブックで我慢するしかなかった。
Hoppin John.mp3
メルヴィン・ヴァン・ピーブルズは、この作品の前に『ウォーターメロンマン』を撮っている。
不条理におかしなブラック・コメディだ。
いずれ、このページで紹介しよう。
MVPの最近の作品に『アート・オブ・エロス』の一挿話『ブルーン・ブルーン・ブルーン』がある。
これはべつに観なくても損はしない。このオムニバス競作はニコラス・ローグの『ホテル・パラダイス』が目玉。他はなんだか信じられないような駄作が混じっている。ミカ・カウリスマキの『狂熱の白日夢』とか、ひどいもんだった。エロ映画だって性根入れてつくれよっての。
まあ、MVPには関係ないけど。
息子のマリオMVPがつくった『バッド・アス』に期待しよう。