1998年7月13日月曜 VIDEO
『ホットシティ』 原タイトル『オリジナル・ギャングスタズ』
――なんとアイス‐Tの第四アルバムと同じ題だ。
ブラック・ムーヴィーの短い歴史が、黒い暴力と黒いセックスをそれ自体としてのみ「黒い仮面」として商品化させられるという屈辱を含みながらも、90年代の黒人自身による表現として全面開花してきた過程に必然的に(?)生まれた不可思議な作品である。
早い話が人物を黒人に置き換えただけの典型的な「現代やくざ映画」。
二十年ぶりに戻ってきた故郷で悪辣な稼業を営むギャングたちを実力でたたきだす元ギャングスタズ。
年のせいでなまってしまった体力を嘆きながらも、あこぎなまねをする新興のギャングたちに対決するセリフもおなじみのものだ。
――おれたちの時代にはこんな汚いマネはしなかった。
カタギに迷惑かけちゃいけねえ……。
パム・グリア、
フレッド・ウィリアムソン、
ジム・ブラウン、
ポール・ウインフィールド、
そして黒いジャガーことリチャード・ラウンドツリー。
すべてブラック・マッチョ時代の往年のアクション・スター。
東映やくざ映画でいえば、鶴田浩二、若山富三郎、菅原文太、高倉健、藤純子のオールスター・キャストの復活のようなもんだ。
かれらが二十年ぶりに荒廃した故郷の街に帰ってくる、これが『ホットシティ』の物語。
かつてのアクション・スターたちが物語で体現する「オリジナル・ギャングスタズ」とは、いったい何者なのか。
かれらの存在は抽象的な正義にすぎない。大衆的なヒーロー像。
しかしアメリカの都市黒人において、二十数年前に在ったマッチョ・ヒーローの像は絶対に抽象に帰すことのできない存在だろう。
かれらは過去からの亡者ではない。
現実の歴史につながる。
現実の歴史につながって、かれらは「自衛のためのブラック・パンサー党」と呼ばれていた集団を呼び戻しているのだ。 ブラック・コミュニティを自衛し、子供たちを麻薬から守り、女たちを暴力から守り、男たちにブラックマンの尊厳を与える集団――アメリカ社会がもはや永遠に失ってしまった理想。
こうした理不尽な夢をブラック・シネマの多くが内包していることを否定する者はだれもいないと思える。
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